放課後等デイサービス運営で赤字を回避する実践的な方法

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放課後等デイサービスの赤字事業所の割合は、4割を超える水準が続いています。

しかし「赤字」と一口に言っても、原因は施設ごとに異なります。利用者数が足りないのか、加算を取りこぼしているのか、固定費の構造に問題があるのか。原因を特定しなければ、打ち手は見えてきません。

本記事では、赤字の原因を構造的に分解し、何から着手すべきかの判断軸を整理します。かつて自社施設で赤字を立て直した経験と、集客支援先での改善事例をもとに解説します。

放デイの赤字率の実態

独立行政法人福祉医療機構(WAM)が公表している経営分析レポートに基づき、放課後等デイサービスの赤字事業所の推移を整理します。

年度赤字事業所の割合出典
2019年度42.2%WAM「2019年度 児童系障害福祉サービスの経営状況について」
2020年度約37%WAM「2020年度(令和2年度)児童系障害福祉サービスの経営状況について
2021年度45.0%WAM「2021年度(令和3年度)児童系障害福祉サービスの経営状況について

※2019年度の児童系障害福祉サービスの単独レポートは未確認。前年度比較は2020年度レポート(上記中段リンク)を参照。

利用児童単価は前年度より低下し、サービス活動増減差額比率が1.6%に低下。赤字事業所割合は45.0%に拡大

独立行政法人福祉医療機構「2021年度(令和3年度)児童系障害福祉サービスの経営状況について

2020年度は、コロナ禍による臨時休校の特例措置(学校休業日単価の適用)により一時的に単価が上昇し、赤字率は改善しました。しかし2021年度にはその効果が剥落し、赤字率は45.0%に拡大しています。

注目すべきは、この構造が改善していない点です。事業所数が増加する一方で、1施設あたりの利用者数が薄まり、赤字に陥る施設が構造的に増えています。

では、赤字の原因はどこにあるのか。次のセクションで、放デイの収益構造を分解して整理します。

赤字の原因を収益構造から分解する

放デイの損益は、以下の構造で決まります。

売上の構造

放デイの売上は「利用者数 × 月間利用日数 × 単価(基本報酬 + 加算)」の3変数で決まります。この3つの変数のうち、どれが不足しているかで打ち手が変わります。

売上を構成する3変数 — 利用人数・利用日数(利用率)・単価(基本+加算)。変数=チャンス、単価はほぼ固定

変数①: 利用者数

新規利用者の獲得が不足している場合、売上の天井そのものが低くなります。定員10名の施設で実際の利用者が5名であれば、どれだけ単価を上げても売上は定員充足時の半分にとどまります。

利用者不足の施設に共通する傾向として、以下が挙げられます。

  • 保護者がインターネットで施設を検索した際に、自社のホームページが上位に表示されない
  • ポータルサイトに掲載しているが、問い合わせが来ない(または来ても契約に至らない)
  • 相談支援事業所との関係構築が不十分で、紹介が発生しない

これらはいずれも「集客の仕組み」の問題であり、支援の質とは別の課題です。

変数②: 利用日数(利用率)

契約者がいても、実際の通所日数が少なければ売上は伸びません。週5日通所可能な利用者でも、実際には週1〜2回しか通所していないケースは珍しくありません。

独立行政法人福祉医療機構(WAM)の2021年度レポートによると、放課後等デイの平均利用率は85.5%です(前年度84.7%から0.8ポイント上昇)。一方で、後述する損益分岐利用率は施設規模にもよりますが概ね70%前後です。つまり、平均値の施設は黒字圏内にいるにもかかわらず、45%が赤字ということは、利用率が損益分岐を大きく下回る施設が相当数存在することを意味します。

※参照: 独立行政法人福祉医療機構(WAM) 2021年度 児童系障害福祉サービスの経営状況について(PDF) — 図表1「利用率」欄

新規利用者の獲得に目が向きがちですが、既存利用者の利用率を高めることが売上の礎になる点は見落とされやすいポイントです。既に契約している利用者の通所頻度が週2回から週3回に増えるだけで、その利用者からの売上は1.5倍になります。新規獲得のための広告費もかかりません。

これは小売やサービス業における「リピート率の向上が新規獲得より費用対効果が高い」という原則と同じ構造です。放デイにおいては、保護者との丁寧なコミュニケーションやフォロー、送迎時間の柔軟な対応、子どもが「また行きたい」と思えるプログラム設計が、利用率を支える施策になります。

変数③: 単価

基本報酬に加え、各種加算が単価に影響します。ただし加算には性質の異なる2種類があり、赤字対策として現実的に手をつけられるものは限られます。

ひとつは、事業の設計段階から人員配置やプログラムを組み込んで算定する加算です。たとえば専門的支援加算は、専門職の配置と支援実施計画の作成を前提とします。こうした加算は、開業前からその体制と事業計画を用意してきた事業所が算定できるものであり、運営が始まってから「単価を上げたいので取得する」と方針転換しても、人員体制ごと作り直す話になるため現実的ではありません。2024年度の報酬改定では専門的支援加算や児童指導員等加配加算の要件が見直され、体制を整えていない事業所にとってはむしろ算定のハードルが上がっています。

もうひとつは、現在の体制のまま、日々の業務の延長で算定できる加算です。欠席時対応加算(利用予定日に欠席した児童の家庭へ連絡・相談援助を行った場合、1回94単位・月最大4回まで)や、関係機関連携加算(児童相談所や医療機関等と連携して情報共有を行った場合に算定)が該当します。金額は大きくありませんが、すでに行っている連絡業務や連携を記録として残すだけで算定できるにもかかわらず、取りこぼしている事業所は少なくありません。こうした「忘れがちな加算」を拾うことは、体制を変えずに単価を補完する現実的な手段です。

赤字対策としてまず着手できるのは、後者の小型の加算です。前者のような体制を前提とする加算を新たに狙うのは、利用者数が安定して体制に余裕が生まれてから検討すべき順序になります。

この章のポイント

加算の取得だけで赤字が解消するかというと、そうではありません。加算で単価が上がっても、利用者数が少なければ売上の絶対額は小さいままです。利用者が集まっている状態で加算を取るから効果が出る。この順番が重要です。

固定費の構造

放デイの固定費は、人件費以外では家賃や光熱費・広告宣伝費やツール代などが主な固定費です。この中で人件費が全体の60〜70%を占めます。WAMの同レポートでも、サービス活動収益対人件費率は2021年度に前年度から4.2ポイント悪化しており、人件費負担の増大が赤字拡大の一因であることが示されています。

人員配置基準により、利用者が少ない状態でも児発管1名・指導員2名の最低配置が必要です。定員10名規模の事業所では、子どもが1人しか通所しない日でも、サービス提供時間帯には児発管1名と指導員・保育士等1名以上(十分な知識と技能を有する者)を含む2名以上の配置が求められます。つまり、利用者が定員の半分でも、人件費はほぼ同額が発生します。以下は定員10名・指導員等2名体制の一例です。

1日の利用者数必要な人員配置人件費(概算)
5名(定員の50%)児発管1・指導員2満員時と同額
10名(定員の100%)児発管1・指導員2満員時と同額
配置基準により人件費の下限は固定されている — 利用者が少なくても児発管1名・指導員2名以上の配置が必要

同じ人件費でも、利用者が5名なら売上は半分、赤字になります。ここに放デイの赤字構造の本質があります。人件費は定員に応じて増えるのではなく、配置基準によって下限が固定されているため、利用者数が少ないほど1人あたりの人件費負担が重くのしかかります。

このうち広告宣伝費については、効果検証をせずにポータルサイト等への出稿を続けているケースが少なくありません。この点は後述します。

損益分岐利用率の計算

自施設の損益分岐点は、以下の計算式で把握できます。

公式損益分岐利用率

損益分岐利用率 = 月間固定費 ÷(定員 × 月間営業日数 × 単価)

計算例月間固定費140万円の場合

定員10名・月22日営業・単価9,000円
140万 ÷(10 × 22 × 9,000)= 140万 ÷ 198万 = 約71%

損益分岐利用率の計算 — 月間固定費 ÷(定員 × 営業日 × 単価)、定員10名・月22日・単価9,000円・固定費140万円なら71%が損益分岐

この施設では、定員の71%(7.1名/日)を下回ると赤字になります。

この計算式に自施設の数字を当てはめることで、「あと何名で損益分岐を超えるか」が明確になります。赤字対策の第一歩は、自施設の損益分岐点を正確に把握することです。

赤字の最大要因は利用者不足にある

前述の3つの変数(利用者数・利用日数・単価)のうち、赤字の最大要因は「利用者数の不足」です。

理由は構造的なものです。

加算や利用率の向上は、一定の利用者数がいて初めて効果を発揮します。利用者が定員の半分以下の状態で細かく加算を取得しても、売上の絶対額は限定的です。人件費の見直しも、配置基準の制約がある以上、削減自体が現実的ではありません。

一方で、利用者数が増えれば状況は変わります。稼働率が上がり、売上が増え、専門職を採用する余裕が生まれ、特定の加算が取得でき、単価も上がる。好循環は利用者の獲得から始まります。

赤字に直面すると、コスト削減や加算取得など「手をつけやすい施策」に意識が向きがちです。しかし、利用者数の問題を先に解決しない限り、根本的な改善には至りません。

自社施設での立て直し事例

ここからは、私たちが自社施設で実際に行った赤字の立て直しについて記載します。

効果の薄いポータルサイトへの出稿を停止

最初に行ったのは、業界では定番とされるポータルサイトへの出稿停止です。

放デイ業界では、大手ポータルサイトへの掲載が「とりあえずやっておくべき施策」として定着しています。しかし私たちの施設では、ポータルサイト経由の問い合わせは、自社ホームページ経由と比べて契約に至る率が低い状況が続いていました。保護者が複数施設を並行して比較検討するため、「問い合わせだけして終わる」ケースが多かったためです。

当時、業界大手ポータルサイトへの掲載費として月額8万円程度を支出していました。この費用と契約獲得数を照らし合わせた結果、費用対効果が見合っていないと判断し、出稿を停止しました。

予算配分の転換
SEOを本命に、リスティング広告で繋ぐ

ポータルサイトの費用が浮いた分を、自社ホームページのSEO対策に投資しました。

ただし、SEO対策は成果が出るまでに時間がかかります。その間の集客を維持するため、Googleのリスティング広告を並行して出稿し、「地域名 + 放課後等デイサービス」等のキーワードで短期的な問い合わせを確保しました。

この判断の根拠は、放課後等デイサービス業界におけるSEO集客がブルーオーシャンであったという点にあります。事業所数は全国で2万箇所を超えていますが、SEO対策に本格的に取り組んでいる施設はごく一部です。業界内の競争は激しくても、インターネット上での集客競争はまだ空いている。この構造は現在も変わっていません。そして現在、私たちは自社施設で得た知見を整理し、放課後等デイサービス事業者向けのSEO対策サービスとして提供しています。

SEO対策として着手したのは、ホームページのコンテンツ整備と、関係省庁の公開資料や業界の研修資料を活用した情報発信です。一次情報を積み上げることで専門性と権威性を示し、結果として市の公式サイトや大手ポータルサイトよりも目的キーワードで上位に表示されるようになりました

結果

適切な施策へ切り替えることで改善した事例 — 切替判断後、再投資による利益が累積していくグラフ

この転換を実施した結果、数ヶ月で利用率が100%を超える水準に到達しました。他施設の事例は導入事例ページ、集客方法の具体的な手順は別記事「放課後等デイサービスの集客方法」にまとめてあります。

支援先施設に共通する改善パターン

私たちは自社施設の運営を経て、現在は放デイの集客支援を行っています。支援に入る施設には、相談に至るまでの経緯に共通するパターンがあります。

多くの施設は、ホームページやGoogleマップを「一度作れば終わるもの」と捉えています。制作会社に発注し、納品されたまま運用も改善もされていない状態が珍しくありません。集客を継続的に攻略していくという発想そのものが、持たれていないのです。

その状態のままでは、事業は立ち行きません。手元の資金が地味に減り続け、ここで初めて集客と正面から向き合うことになります。早く改善に動くか、見込みがなければ撤退するか。経営判断を先延ばしにするほど傷は深くなります。この流れは、私たち自身が自社施設で通ってきた道とほとんど同じです。私たちも当初は、発達支援センターへのチラシ設置、大手ポータルサイトへの出稿、学校や相談支援事業所への定期訪問といった業界の慣例に沿って動いていました。これらは、悩んでいる保護者にとって最適な接点ではありません。「自分たちならこう解決できる」とホームページで示す方向へ切り替えるまでに、相当の時間がかかりました。

相談をいただいた施設とは、ここから一緒に立て直しを進めていきます。共通して着手するのは、次の3点です。

  • 赤字の原因を「利用者数の不足」と明確に特定する
  • 効果が出ていない施策(多くの場合、ポータルサイトやチラシ配布)を、数字に基づいて停止する
  • ホームページとSEO対策に集客の軸を移す

逆に、改善が進みにくいのは、複数の施策を同時に少しずつ進めて、どれも中途半端になっている施設です。限られた予算と人手で成果を出すには、施策を絞り込む判断が欠かせません。

なお、こうした見直しに動くのは、多くの場合、事業オーナーです。日々の現場を支えるスタッフが集客の改善に時間を割く機会は多くありません。だからこそ、経営の数字を見ている立場の方が、原因の特定と打ち手の優先順位付けに踏み込む必要があります

赤字を放置した場合のリスク

赤字が続いた場合に想定されるリスクを整理します。

放置時に起こる3つのリスク

人材の流出:赤字が続くと待遇改善や研修への投資が困難になります。また、施設の中で、あるいは社会の中で「自分の役割を果たせていない」「本来提供すべき支援が提供できていない」と感じると、自信を喪失したり、自分がなぜここにいるのかわからなくなってしまうことも考えられます。結果として意欲の高いスタッフから離職が進み、支援の質が低下し、利用者の離脱を招く悪循環に入ります。

報酬改定や返戻などの耐性低下:経営資金に余裕がない状態で報酬改定が入ると、基本報酬や加算要件の変更にそのまま振り回されます。加えて減算や返戻リスクに対して、大幅な改善を行う体力すら維持できないケースもあります。

廃業:放デイの廃業は、経営上の問題にとどまらず、通所している子どもたちの居場所がなくなることを意味します。地域の福祉資源が一つ失われる事態です。

赤字の原因が利用者不足にあるのであれば、集客を立て直すことで改善の余地があります。重要なのは、原因を正確に特定し、打ち手の優先順位を誤らないことです。

まずは自施設の数字で現状を確認することから

放デイの赤字には、施設ごとに異なる原因があります。本記事で示した収益構造の分解と損益分岐の計算を、まず自施設の数字で試してみてください。

原因の特定や施策の優先順位付けに迷う場合は、個別にご相談いただけます。私たちは放課後等デイサービスの立ち上げから運営までを経験したメンバーのみで、集客支援を行っています。まずは無料の個別相談から、現状を一緒に整理しましょう。

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